昭和17年 シンガポール陥落 !

       日 本 本 土 初 空 襲 !

 開戦以来2ヶ月がたち、おとそ気分もようやく抜けた2月の事です。

この頃は、毎朝のようにラジオから流れる、「 大本営発表!」の勝ち戦のニュースに、国民は一様にまだ「この戦争は負ける筈がない!」と安心しきっていました。

 

そして、 昭和17年2月15日「シンガポール攻略」のニュースが発表されました。 イギリスの統治下にあった、難攻不落と言われた、シンガポールを陥落させ、イギリス軍の手からシンガポールを救った「正義の戦い」に勝利したとして、日本中が戦勝ムードに沸き返り、数日後には日本全国の子供から大人達までが、日の丸の小旗を振りながら「 出たよ 出ました 真っ赤な玉が シンガポールの上に出た 玉じゃござらぬ 日の御旗 日本晴れだよ 勝ちどきだ 両手を広げて バンザイ! バンザイ!」と言うような歌を歌いながら、昼は旗行列、夜は提灯行列、と戦勝を祝い「バンザイ! バンザイ!」の歓呼の声に溢れ返っていました。

 

そんな中、間もなく数え年で3才を迎えるボクは、相変わらず元気いっぱい、毎朝ラジオから流れる「お山の杉の子」の歌声で目を覚まし、食事の時以外は家中ところせましと暴れまわっていました。 

 

 ところが、4月18日には米軍の、B25爆撃機16機による東京、名古屋、神戸を狙った奇襲的な初めての日本本土空襲があったのです。

しかし、思ったより被害が少なかったせいもあり、国民は楽観的でまだ、意気揚々としていたのです。 

 

この様な情勢の中でも、父は休みの日には、ボクの手を引いて買い物や遊園地などに連れて行ってくれました。 中でもボクが大好きだったのは、浅草の木馬館と上野動物園でした。 


 木馬館は格好良い戦車や飛行機、木馬などが沢山並んで、グルグルと回っていました。 別の場所には、お金を入れると本当のお馬さんみたいに前後に揺れる大きな白馬もあり、ボクは何度も何度も乗ったものです。 そして、満足したら帰りには売店で金平糖の入った、セルロイド製の刀を買ってもらうのが何よりの楽しみでした。

 

上野動物園にはジョン、トンキー、ワンリーと言う名前の三頭の象さんたちがいました。 この象さんたちは物凄くおりこうさんで、ボクたちに挨拶したり、台の上に乗って、鼻で旗を振ってバンザイをしたりと色んな芸をして、ボクたちを楽しませてくれていました。   ライオンやお猿さんたちも沢山いましたが、ボクは象さんと会うのが一番の楽しみでした。